椅子上生活

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#リモラブ の挑戦。コロナ禍での「俳優」は危険な仕事なのか

 2020年の秋ドラマは「恋あた」の他に「#リモラブ~普通の恋は邪道~」を見ておりました。
 そこでちょっと、この時代に俳優という仕事をすることについて思うところがあり、記事を書くことにしました。


www.ntv.co.jp

「 #リモラブ」の挑戦

 日テレ「#リモラブ」はミッチー(及川光博さん)が出ていたから、まぁ見るんですけど、大好きな朝ドラ「スカーレット」の脚本家さん、水橋文美江さんが担当だったので、それも楽しみに見ました。ハチさん(松下洸平)も出てるし。


 このドラマはコロナがある2020年を舞台にした、ある企業の産業医・美々先生(波瑠)のラブコメ。登場人物は距離を取りマスクをして消毒するし会議のシーンでは換気もする。出会いは自粛期間中の架空のSNS


 俳優の演技の都合上、表情を見せるために時代設定がどうであれマスク無しでドラマを撮影することが多いけれど、このドラマは現代のコロナ真っただ中、マスクや感染対策を劇中でも出しまくるという試みで話題にもなりました。


 1話の美々先生がなかなか鼻につく感じの性格で、相手候補が5人も出てきて大丈夫かなーと見守っていましたが、密ギャグやらそれぞれの恋模様やら、水橋さん脚本での松下さんが急にかっこよくなるところや、イチャコラコントやら、かわいいぞコノヤローやら、なんやかんや楽しんで見ていましたが…


 よりによって感染者0を長らく維持していたあの岩手県から親が上京してきてしまうという設定だったり、関西で感染拡大しまくっていた12月上旬に関西に出張してしまうなど、リアルタイムのコロナを扱うことの難しさがかなりタイミング悪く出てしまったなあという印象…。


 あんなにウィルスに気を付けている美々先生が自宅に他人を招待する??家で女子会??という、執筆時期との感覚のズレもちょいちょい見られ(たぶん出かけたり外食はダメ、家で少人数なら可と思われてた頃)、ううーん、感染拡大条件も流動的な中でコロナを描くというのはやはり難しいなと感じました。


 中盤、朝鳴部長(ミッチー)が何の説明もなく突然おしゃれマウスガードになってて、一般企業であんなの付けてる人見たことない!と思ってちょっと笑ってしまいました。(あれは室内でサーキュレーターを回し、換気対策もしているカネパルだから許されると思っている)
 まあミッチーあれ似合うんですけどね、似合うから仕方ないね。


 コロナを劇中に出すということは、誰かが感染する可能性がある…?と心配しましたが、さすがにそこまでは盛り込まなかったようです。ちょっとホッとしました。


 SNSから出会ったくせに「やっぱり生身じゃないと」という若干押し付けがましい価値観も見られたけど、最終的にはSNSも上手く使いながら美々先生と青ちゃんが無事仲良く過ごしていけそうでよかったです…、が!

 最終的に、結婚はすることになったものの看護師になる夢を叶えた八木原くんに「おと」を継がせるわけにはいかないと思う栞ちゃんの気持ち(すごくわかる)には結論は出ず、「新しいお母さんはいらない」と言う保くんの急な心変わりにより肇ちゃんは富近先生と3人でクリスマスを過ごし…。若干、保はそれでいいの?という気持ちは抜けず、ハッピーエンドながらももんやりとしたドラマでした。
あと、ゴモちゃん…?ゴモちゃん幸せになって…?岬さんは最初恋の容疑者扱いだったのに、完全なる出落ちw …まあいいでしょう。

あと「普通の恋は邪道」の意味もよく分からなかったw


でもコロナがそばにありつつもコミカルにキャッキャ楽しいドラマだったと思います。(楽しいだけじゃなく人と人が分かりあうことについても丁寧に描かれていてそこも好感)
3話くらいから面白くなってきたかな。毎週楽しみに見ました。
終盤、心の声をちゃんと言葉に出して伝えようとする美々先生のがんばりに、心がギュッとなりました。がんばれー!


 物語的にはそんな感想ですが、それとはまた別に、感染対策をしながら撮影し、それをそのままドラマとして見せる、ニューノーマルなドラマという挑戦はとても意義のあるものだったと思うのです。
 狭い部屋のシーンではサーキュレーターが動いていたし、撮影時はちゃんと2m離れているか都度測ったりと、かなり徹底していたようです。*1


 マスク越しのキスシーンという挑戦や、最後の美々先生と青ちゃんのキスシーンも、最近はあまり見なくなってたけれど撮影角度を変えて、実際接触しなくていいやつにしてくれて配慮を感じました。さすが!!

俳優という、現代では特殊なお仕事

 今の時代、マスク無しでやらなければいけない仕事というのはほぼありません。マスク無しで過ごさねばならない、人と接しなければならないという仕事は、かなり特殊な仕事だと思います。感染対策をしているとはいえ、少なからず本人も不安を抱えながらの仕事になると思います。


 昨年の自粛期間中に電話やZOOMを利用したリモートドラマという、感染対策しつつ作ったものがいくつか出てきましたが、挑戦的ではあるけれどやはりいつものドラマとは違うものという印象は拭えず、いつものドラマに感染対策の方を持ち込んだリモラブは、ある意味潔いな、と思いました。


 今の時代に俳優だからと言って「ハイここでキスしてねー」、と、密なシーンを自然に演じろというのは、視聴者として、ちょっと見過ごすことができない。
事前にPCR検査してます、陰性です、だからやります、って言っても。いや分かんないじゃん…?いつ感染するかは誰にも分からないし、だからこそ俳優のことも一人の人間として尊重し守って欲しい。ドラマを愛するものとして、俳優という仕事を「危険な仕事」にしてはいけないと思うのです。

 正直、今までドラマ出演者に感染者が出ていないのはラッキーでしかないと思います。


 半沢直樹もかなり顔が近づいてアップなシーンがあったけれど、1人アップが多く、向かい合って話すのはコロナ禍後は実は合成と聞いて少しほっとしたものでした。


 画面の端にサーキュレーター回っててもいいし、会議や食事のシーンで距離があってもいい。横一列でも構わないし、なんならテーブルの真ん中にアクリル板あっても気にしないよ。
演技を妨げないことと感染対策は工夫次第で両立すると思います。




再び緊急事態宣言が出ました。もっともっと安全で進化した番組作りを期待したいです。




*1:水橋さん寄稿、リモラブについての色々の記録はこちらの書籍を取り寄せて読みました。 北國文華|ほっこく堂|北國新聞社の本